ブルーオーシャン戦略というものがある。

 

ブルーオーシャン戦略とは、企業が競争の激しい市場(「レッドオーシャン」)を避け、新しい市場(「ブルーオーシャン」)を創造することを目指す経営戦略だ。競争が激しい市場から離れることで、価格競争や利益率の低下を避けることができる。例えばiTunesがそうだ。iTunesは音楽配信サービスとして、CD販売市場とは異なる新しい音楽購入の仕組みを提供し、顧客にとっての利便性を大幅に向上させた。

 

今日はこのブルーオーシャン戦略を説明するために「ナンパ勝負」という話をしたい。

 

断っておくが、大したオチはない。

 

8月1日、2日、3日と地元で祭りがある。それは地元で一番の祭りで、3日目には花火がある。

 

夜の空に打ち上げられた花火が、漆黒の闇を一瞬で色鮮やかに染め上げる。夏祭りの喧騒の中、若い女の子たちが浴衣姿で行き交い、その姿がまるで幻想のように美しい。

 

彼女たちは、色とりどりの浴衣に身を包み、風に揺れる帯や髪飾りが涼しげな音を立てていた。屋台の灯りが彼女たちの笑顔を柔らかく照らし、その笑顔はまるで真夏の太陽のように輝いている。ある女の子は、友達と共に金魚すくいに興じており、その手つきは慎重でありながらも楽しそうだ。別の女の子は、綿菓子を頬張りながら、その甘さに瞳を細めていた。

 

若者たちの笑い声や囁き声が、祭りの夜に溶け込む。彼女たちの姿は、この夏の一瞬の輝きを象徴するかのようだ。ときには、あどけない表情で、またときには少し大人びた表情で、彼女たちはこの一夜を楽しんでいる。

 

花火がまた夜空に咲き、その光が彼女たちの瞳に映り込む。夏祭りの賑わいの中で、若い女の子たちの姿は、まさに一瞬の美しさを刻む光景であった。

 

これだけキラキラした天使たちを見てしまうと、家でじっとしていることはできない。それで花火が終わりかけた頃に友達と繁華街にナンパをしに行くことになった。その時友達が、別行動をしてどちらがナンパできるか勝負しよう、と提案してきた。1時間後に女の子を連れてきた方が勝ちというルールだ。そのルールにお互いが納得し、勝負は始まった。

 

しかし僕は勝算がなかった。福山雅治でさえ渋谷でナンパして成功率1割だというデータを知っていたからだ。僕は福山に比べて身長もなく、ルックスも足りていない。『KISSして』というオーラも『家族になろうよ』という包容力も足りていない。

 

良くて引き分けだろうと思った。本来ナンパは成功しないものだ。失敗しても友達と馬鹿やった感が楽しい。人類が狩猟・採取から農耕・牧畜にシフトしたことも納得がいく。僕は共通テストの会場に向かう学生のように、ナーバスになりながら夜の街をさまよった。

 

1時間後、友達と合流するためにコンビニの前に行った。友達は「俺の勝ちだな」と話しかけてきた。しかし女の子らしい人影はなかった。そこには荷物をいっぱい持ったおばあちゃんが立っていた。聞くと、友達も全然ナンパがうまくいかず、残り5分でたまたまコンビニにいた、おにぎりを見つめていたおばあちゃんに声をかけたそうだ。おばあちゃんは「飯を食わせてくれるならついて行きます」と言ってついてきてくれたそうだ。僕らは彼女に唐揚げクンのレギュラー、チーズ、レッドを3つおごり、3000円を渡した。

 

ブルーオーシャン戦略は、競争の激しいレッドオーシャンではなく、まだ誰も気づいていないブルーオーシャンにリソースを投入する戦略だ。もしブルーオーシャンを見つけることができれば、一人勝ちができる。

 

ちなみにそのおばあちゃんはとても博識だった。「結局、人生は幻想だ」と言う話をしてくれた。それは大変ためになった。名古屋大学理学部卒業だと言っていたが、それもうなずける位本質を見抜く力があった。

 

天使はゲットできなかったが有意義な時間だった。